webじゃないけど読んだ漫画の感想を備忘録的に書いていく。
もうずいぶん昔の漫画だけど読み返したので取り上げる。
今回は「百日紅」。
葛飾北斎とその娘お栄と渓斎英泉を取り上げた漫画。
名作。
結構前だけどアニメ映画にもなっていた。2017年ぐらい?
漫画が連載されていたのは1983年から1988年。
40年前の作品なので、そういう視点で読まないとそんな名作じゃないじゃん、となる。手塚治虫とか萩尾望都とか、当時の社会情勢に対する視点を持たない限り、評価するのが難しい。
絵柄とかが古いのは仕方ない。初めて読んだ時はジョージ秋山の「浮浪雲」の初期のころとかを思い出した。
空想の江戸を切り取って紙に写し取った作品。
江戸と怪異と浮世絵と。
多分、この物語に込められたメッセージは、あと数十年もすれば社会から失われて、読み取れる人もいなくなるだろう。
百日紅の感想
ざっとでいいので葛飾北斎、葛飾応為(お栄)、渓斎英泉の浮世絵を春画も含めて検索して見ておくと良い。
絵に対する価値観は時代時代で全然違うわけで、時代が下るから写実的になるというわけでもなく、江戸期の価値観が浮世絵的なものだったというのが興味深い。
例えば鳥獣戯画とか、雪舟とか明兆とか、過去にそういう絵があるわけで。
浮世絵の絵師は、最近の社会に似たようなものを探すのならば、萌え絵漫画家みたいなものなんだろうなと。
葛飾応為の残存絵は少ないが、様々な研究から北斎作とされている絵の中に応為作のものがかなり混ざっているとされている。また、彩色などを担当しているという研究もあり、その辺りの歴史を知っていると本作は面白く読める。
実際のストーリーは浮世絵がメインではなく、江戸の庶民の暮らし。
作者的には漫画を描きたかったわけではないと思うのだけど、豊富な知識から江戸の風俗を切り取った、知識に裏打ちされた絵は今後貴重になっていくのかなと。
「火事と喧嘩は江戸の花」なんて言葉があるけど、それを踏襲しつつも、ストーリーの作り方、場面の切り取り方にオリジナリティーがあって、それが独特の空気を作っていて、それがこの作品の良さになっている。
40年という時代の流れを振り返りつつ、もう2度と見ることはできない江戸の街に思いを馳せる、そんな漫画。