webで読んだ漫画の感想を備忘録的に書いていく。
「偽聖女クソオブザイヤー」。
出版はKADOKAWA、原作は壁首領大公、漫画はえかきびと、キャラクター原案はゆのひと。無料で読むには、webだとComicWalkerとか。
原作の「理想の聖女? 残念、偽聖女でした!」はカクヨムとかハーメルンで読める。
原作の主人公がなんJ民っぽい感じで、結構ネタだらけなんだけど、漫画版は少しマイルドになっている感じ。そのネタだらけのノリがダメな人には合わないと思う。
最初のほうはネタっぽさがすごいが、物語の構成としては結構ちゃんとしていて、後半の作りは見事だと思う。
漫画で最後までやってほしいけど、どうなるか…。
ゲーム世界に入るというのはよくあるし、ts物(性が変わるもの)はssとかでなんだかんだでよくあるものだけど、上手く昇華して物語にしている。
ゲーム転生、TS転生、悪役転生と、いろんな属性をてんこ盛りにしているけれど、本質はそこではない。
ここ数年でよくある女性向けの悪役令嬢ものとかは、設定だけしかなくて中身ペラペラなものも結構あるけど、この作品は、設定は重要ではあるけど単なる属性であって、主人公が変化・成長していく様をちゃんと理由付けをして書いている。
転生ものなのにちゃんとした作品。最近だと珍しい。
偽聖女クソオブザイヤーの感想
物語としては死にそうなそこそこ年のおっさんが、いつの間にかゲーム世界の嫌われ役の偽聖女に転生するというもの。
ゲーム設定での偽聖女は完全に嫌われ者で、有り余る才能を育てることなく、怠惰に不摂生にわがままに悪辣に生きていて、そのせいで見た目も体系も悪くなり、嫌われて悲惨な最後を遂げるという役。主人公は5歳でその偽聖女に転生し、その才能を努力と鍛錬でさらに磨き上げ、偽物なのに本物以上の聖女としてふるまうことで、ゲーム世界を進めていくという話。
ゲーム内の本当の聖女はこれまたあまり報われないという設定でほとんどのルードで幸せになれないのだが、偽聖女になった主人公は、聖女や他の登場人物をみんな幸せにしてハッピーエンドを目指すことを目的に、ゲーム内で奮闘していくという立て付けのストーリーで進む。
のだけど、よくあるそういう系統の設定を使いつつも、ちゃんとずらしてきているのがこの作品の良いところ。
ちょっとネタバレになるのであまり書きたくないのだけど、単純な転生物ではなく、現代日本の主人公も平行して物語に関わっていくことになる。
漫画的には話がそんなに進んでいないので、どうしても原作も含めた感想になってしまうけど。
最初のほうのネット民っぽい一人称語りがダメな人は、原作を切ってしまうと思うのだけど、そこを抜けるとストーリー構成はけっこう巧みな話なので、読みごたえがある。コミカライズ版は多少このネット民っぽい感じが薄れているというか、やっぱり絵があると一般的に受けいれられやすい。
悪役転生ものはけっこう自分勝手な「お気持ち表明」なだけの作品が多いのだけど、この作品は、賛否はあるだろうけどちゃんと理由付けしてあるのが良い。
主人公がちゃんと変化して、その変化に理由付けがあって、物語に結末がついている、という、物語の基本を網羅した異世界転生作品は、そんなに多くないので、コミカライズ版もなんとか最後まで連載してほしいと期待したくなる作品。